東京高等裁判所 昭和27年(う)3765号 判決
〔抄 録〕
論旨第一点。
(1)について。
然し乍ら、原審第四回公判における証人千葉卯右ヱ門供述にかかる公判調書の末尾に編綴してある二葉の紙片が、原審判決に証拠として示されている「証人千葉卯右ヱ門の当公廷における供述並に宿泊人の入金控の記載」とあるその入金控に該当することは、右証人が、右供述に当り、訴訟関係人の同意及び裁判官の許可を得て、その持参した「宿銭を受取つた順に氏名を書いた帳簿即ち入金控」を参考にして、その記載内容を基に記憶を辿り、被告人が右証人経営の宿泊所に本件犯行の日とされている昭和二十七年五月九日夜の幾時頃帰所したかを説明している前示公判調書の供述記載並びに右公判期日の劈頭に六個の証拠につき施行した証拠調の事実をその取調の順序に従い明示している証拠関係カード(記録四十六丁編綴)に、証人千葉卯右ヱ門を尋問し、次いで直ちに千葉卯右ヱ門提出の入金控の証拠調を適式に履践した趣旨の記載あるに徴し、自づから明白であるのみならず、右入金控が証人千葉卯右ヱ門の前示供述調書の最終末尾に編綴してある同証人の宣誓書と同証人直接の供述部分を記載した書面との間に介在し、且つその孰れもの各葉を通じ、東京地方裁判所書記官印による契印をもつて接続されていることに鑑みるときは原審は、これが入金控を、その記載内容が、証人千葉卯右ヱ門の供述との関係においてその一内容を為すものとして編綴したものであることが窺われる。而して、右入金控については、右説示の如く適式にその証拠調を経た事跡ある以上、これが控につき、原審が敢て領置の手続を採らなかつたからといつて、その証拠能力を否定し得べき限りではないのであるから、原審が、その自由心証に基づき右証人の原審公廷における供述と共に右入金控の記載を信用しこれを証拠に採用したことは洵に正当であつて、これを虚無の証拠であると主張し、原判決に理由を附さない違法があるとする所論は採用し難く、論旨は理由がない。